週一映画備忘録

週に1回は映画を観たい。

登場キャラ皆に目いっぱい牛丼を食べさせたい『ギャングース』感想

総合評価    ★★★★
 
 
 
アップリンクで期間限定上映してたので観てきました~!
劇場公開日から1か月もしないうちに上映が終了してたので観られてうれしかったです。
 
 
 

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ポスターは明るめな印象ですが…
 
 
 
以下ネタバレ注意感想!
 
 
 

暗いシーンはとことん暗く、明るいシーンも胸が痛い

少年院上がりのサイケ、カズキ、タケオが裏稼業や悪徳業種の収益金を狙う「タタキ」稼業に手を染めていく話です。
原作が、取材をもとに描かれたものであることや、入江監督自身も映画製作にあたって取材を重ねたというだけあって、貧困や裏社会の描写がかなりリアルだと感じました。
目をそむけたくなる場面のオンパレードなのですが、特にしんどかったのはカズキの過去ですね…。
シャブ漬けの母親と、その恋人に虐待を受け、果ては妹をレイプされ…その結果、母親の恋人を殺害してしまうという一連のシーンが本当に悲惨でした。
ここではカズキ役の加藤諒(28)がランドセルをしょって小学生の演技をしているのですが、まったくギャグに見えません。
このシーンで完全に打ちのめされてしまって、映画の最後まで心から笑えませんでした。ずっと胸を押さえつけられてる感じがして。
だからこそ、カズキの「現実はいっぱい見てきてるから、これからは大きなことをしたい」というセリフが心に響きました。
 
 
もちろん明るい場面もあります。
タタキのシーンはけっこうコミカルに描かれてました。3人が盗み出す金庫はレプリカではなく本物(重さは100キロ近くだったとか!)を使用しているらしく、主役3人の本気の必死さが伝わってくるものとなっていました。
オレオレ詐欺の名簿を盗んだ後のタタキは、成功していたのもあって素直に面白かったです。見張りの気が抜けた瞬間に殴りかかったりとか。
また、稼いだお金で牛丼を食べたり、根城である廃バスで散髪&記念撮影したりする和ぎの時間もあります。
しかし、私の心はあまり癒されませんでした…そういった幸せなシーンが、かえって切なさを増幅させていたと思います。
牛丼を食べるところは泣けて仕方なかったです。
死ぬ思いで何とかつかみ取ったお金で、幾日かぶりに牛丼を食べて、思わず涙をこぼすサイケ。それを見て「肉を食べると泣けてくるんだよなあ」とこぼすカズキ。
500円するかしないかの牛丼なんですよ。でも彼らにとっては大層なごちそうで…
ちゃんとしたご飯を食べられて本当によかったねという気持ちと、失敗したら死ぬかもしれないタタキを乗り切ってようやく食べられるのが格安の牛丼なのか…といういい知れない虚しさ、他にも様々な感情がやってきて胸がいっぱいになります。
 
 
穏やかなシーンにこそ、3人が抱える行き場のなさ、明日の見えない貧困、世間の風の冷たさをより一層感じさせられました。
 
 
 

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今一番幸せになってほしい3人

 

 

六龍天最後の良心、加藤

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実は加藤役の金子ノブアキ目当てで観にいったのですが、評判通り最高のキャラで大満足でした!!
上映前から話題になっていた振り込め詐欺の説明シーンも、映画館で観られて本当に良かったです。
入江監督も「ミュージシャンだからリズム感がよく、長台詞も音楽的に処理してくれるだろうと思っていたんですが、期待以上にやってくれました」と評している通り、かなりの長台詞なのにまったくもたつかない、テンポの良い演説でした。具体的な数字が盛り込まれていて説得力があるし、職場でもマネしたい。
特に「60歳以上高齢者の平均貯蓄額はいまだに2000万円以上!日本の全世帯の貯蓄の約7割がここに集中してんだ。そんなジジババから100万、200万ぶんどったって、全っ然心は痛みません!」は素直に(せやな…)と思ってしまいました。
高齢者がそこまでお金を持ってるのに、若者の多くはなんでこんなに貧乏なんだ、詐欺が流行っても仕方ないわと思わせられてしまう、すさまじい演説でした。
 
 
加藤さんによる魂の演説はこちら↓
 
 
 
そんな演説をしている加藤ですが、極悪ハングレ集団六龍天の中ではかなりまともなほうです。
演説の後にぼそっと「…がんばろうや」と言ってくれたり、部下のヘマを上には伝えず、なんとか自分のところで処理しようとしたりとちょこちょこ良心が見え隠れします。(タタかれた末端の人たちを椅子でぼこぼこにはする)
もちろん仕事もできる!!サイケたちに狙われていることを予測して、札束の代わりに新聞紙のつまったトランクを奪わせるシーンはしびれましたね!
このお金は安達に渡すのかな?さすができる番頭!と思わせといての裏切りには心底びっくりしましたけど…
殺される直前に「上の人間ばかりが儲けて、下の奴らはこき使われるだけだ…表の世界となんも変わらねえじゃねえか」と正面切って安達に反論するのが最高にかっこよかったです。
安達を心から恐れていない数少ない人間だったんだろうな。
安達が、加藤を殺したことをちょっとだけでも後悔してるといいな、と思います。
 
 
 

完璧な狂人、安達

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めっっっちゃ怖いです。安達。
登場から飛ばしてきます。下着姿の女性たちを床に転がして、釣りをしてるんです。そして、釣りに引っかかった女性の顔を机にたたきつけます。無言で
 
 
とにかく何を考えてるのか一切読み取れないし、一度キレると無茶苦茶暴れる(しかも強い)という厄介なボスキャラです。細身で常にパジャマ姿なのに、巨漢に鉄骨で殴られても殴り返す余力があるくらいタフネスです。
いわゆる「マンガに一人くらいは出てくるやばい人」なのですが、これがお笑いになってないのがすごい。
安達を演じるMIYAVIその人の性格なんじゃないか?と思わされるくらい自然に狂ってます
彼が登場すると胃がキュッてなるんですよ。怒りのスイッチが分からないから、誰が地雷を踏むのかひやひやしながら観てました。
 
 
私のつたない言葉では伝えきれないくらいインパクトのある敵キャラなので、ぜひ実際に観てみてほしいです。
そしてMIYAVIを目にするたびに震える体質になりましょう!笑
 
 
 
実写とは思えないほどリアルに迫った作品で、しんどくなりながらも最後まで目が離せませんでした。
駆け込みで観られて本当によかったなあと思います。
 
 
 

映画基本情報    

劇場公開日    2018/11/23
制作国    日本
監督    入江悠
キャスト    高杉真宙加藤諒渡辺大知、林遣都、伊東蒼
あらすじ  
ルポライター鈴木大介による未成年犯罪者への取材をもとに裏社会の実態を描いた人気コミック「ギャングース」を、「SR サイタマノラッパー」「22年目の告白 私が殺人犯です」の入江悠監督が実写映画化。「渇き。」の高杉真宙、「金メダル男」の加藤諒、「勝手にふるえてろ」の渡辺大知が主演を務め、犯罪集団だけを狙って窃盗を繰り返す3人の少年たちの生き様と友情をリアルに描き出す。親から虐待され、学校に行くこともできず、青春期のほとんどを少年院で過ごしたサイケ、カズキ、タケオの3人。社会から見放された彼らは、裏稼業や悪徳業種の収益金を狙う「タタキ」(窃盗、強盗)稼業に手を染める。暴力団排除の機運を受けて裏社会のヒエラルキーが転換期を迎える中、3人は後戻りできない危険な領域に足を踏み入れていくが……。

 

 

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